生命の不思議な生態_第二話

投稿日:2023年5月1日

生命の不思議な生態(第二話)

 

19億年前、生物にとって最も恐ろしい環境破壊者が現れた。

化石燃料にある地球温暖化どころの呑気な話ではない。CO2が多少増加しても、生命を脅かすほどのものではないが、この生物は地球に毒ガスを排出する。

この生物こそ、単細胞生物のラン藻植物である。

それまでは、酸素の嫌いな(嫌気性)生物しかいなかったため、光合成によって酸素(毒ガス)を撒き散らすラン藻によって、地球は「毒ガス星」になってしまったのである。大気が毒ガスで覆われると、この毒ガスを吸って生きる好気性生物が現れた。

この好気性生物は、酸素を吸って細胞同士をくっつけ、多細胞生物となって体を大きくしていった。

我々を含め、地球上のほとんどの生物が好気性生物であることから、ラン藻の出現は生命のクーデターだったのである。

将来、核戦争になって地球が放射線で充満すると、放射線を取り込んでしか生きられない生物が出現するかもしれない。この時、現在の地球上の生物は当然絶滅する。

原核生物から真核生物へと進化して行ったと学校で教えられたが、ラン藻から進化した植物は、自分で光合成しながら生きてきた。

ところがここで不届きな生物が出現する。自分で働かず、光と水とCO2でブドウ糖を作る植物を食べて、エネルギーにした方が楽ちんだと考えたのか、草食生物が誕生した。

しかし、上には上がいた。この草食生物を食った方がさらに楽ちんだ。こうして繁栄したのが肉食生物だ。

肉食生物は殺しを本業とする「プロの殺し屋」である。

草食生物と肉食生物は、植物を食うか肉を食うかの違いはあるが、生命の殺し屋と言う点では一致している。人間は、知能が発達したために最も獰猛な生物に進化した。動物は、一般的には「種」同士の共食いはしないので、「種」同士の殺し合いはしない。人は共食いはしないが、「種」同士の殺し合いはする。獲物(財産)をため込んだ相手を殺して奪ったほうが楽でいい。

戦争は進化が運命づけたものであり、決してなくならないかもしれない。

「ウィズ・コロナ」ではなく、「ウィズ・ウオ-」は歴史が証明している。戦争のない期間が長続きした試しがない。平和な時と言う言葉は、戦争のない期間を指しているのであり、裕福で幸せな期間を指しているのではない。

「いい加減にしろ!」と言いたい。

戦争のない時代を築きあげることが出来ないようでは、人間を生物の頂点と決して言ってはならない。

動物は、発情期になるとメスをめぐってオス同士喧嘩する。ただし、殺し合うまでは追い詰めない。相手が降参すれば目的は達成されるので、殺す必要はない。「種」が異なれば殺してしまう。その喧嘩はメスをめぐる喧嘩ではないからだ。動物は、「誰でもよかった!」と捨て台詞を言って、必要のない殺しはしない。

サルからヒトが進化したのだとしたら、ヒトの前の猿人の時代は発情期があったはずだ。いつの間にヒトは発情期をなくしてしまったのだろう。

出生率を増すために、年中発情期を獲得したと言うのは疑問である。メスが年中排卵しているのではなく、月経周期の1時点だけだから、他の期間に交尾することは、繁殖のためには全く意味がない。妊娠している時、メスは絶対オスを受け入れない。動物にとっては全く無駄なことだから。ところが人は無駄だからこの期間は交尾しないでおこうとは思わない。

 

何故?

人は身体が貧弱なため脳が発達し、そのために子供の成長が遅い。母親が長年面倒みないと子供は生きて行けない。夫は子供と妻のために狩りに出かけ留守にする。母子は夫の獲物を待っており、その獲物が万が一にもよそ者に持っていかれたら餓死してしまう。だから夫が狩りから帰ると、獲物にありつける報酬の対価として、夫(オス)を受け入れて欲求不満の解消に努めた。

発情期だけしか交尾しないと、母子共々生活に不安が残る。だから人は発情期をなくした。

英国のモリス博士の説である。

メス(妻)が狩り(職場)に出掛けられるようになると、この関係が切れてしまう。

ヒトの誕生以来、女性は家庭にいて家事・子育てに専念してきたが、ここ30~ 40年位前から、より良い生活を求めて夫婦共稼ぎが当たり前の世の中に変わった。

生活が向上し、子供にかける教育費が多くなると、「貧乏人の子沢山」から「金持ちの子沢山」になった。少子化対策のために、政府は子供家庭庁を創設して保育・教育の無償化、子供手当て等に大きく予算を割いてきたが、未だに改善の方向すら見えない。子供を持つ事は、生活を脅かすリスキーなことだと国民が考えるようになってきたからだ。

結婚しない、結婚しても子供を設けない。現代人は絶対妊娠しない「安全日」が発情期になったのか。いやそれはひと昔前のことで、今は科学技術の発展で克服している。

家族を守る最も重要な家事・子育ては、夫が働く数倍の価値があるにも拘わらず、現代はその価値観が軽視されてしまった。女性の地位は身体構造が変わらない限り、強い子孫を残し育てることに価値がある。

人類誕生以来つい最近まで、この価値観は変わらなかった。経済に余裕が出来て、価値観が大きく変わってしまった。

その価値観を今一度見直して、妻が働きに出かけなくても済むような社会を目指すことが出来ないだろうか。こんなことを言うと。女性の社会進出を妨げる「女性差別論者」だと非難されるから、あまり口に出す人はいない。

動物の世界では、一家の大黒柱はメスが担っている。繁殖に要する全エネルギーはメスであり、オスは交尾以外ほとんど役に立たない。

動物はオスがおしゃれをしてメスを惹きつけようとしなければ、メスに選んでもらえない弱い立場である。交尾の相手を選ぶ権利はメスにある。メスに選ばれるオスは強い子孫を残すことが目的だから、免疫力が高そうな相手を見つけるには外見で判断する。

人間は繁殖だけが目的でなく、幸福を追求することが重要なので、外見以外の要素も選択肢に入ってくる。

現代人は、女性が男性を選ぶことが当たり前になってきたが、歴史的には男性が女性を選ぶ時代が長く続いた。だから、女性はおしゃれをする必要があったのだ。逆に言うと、おしゃれをすることはそれだけ弱い立場にあったからだ。

動物と違う点は、子供の成長に時間が掛かり過ぎるからだろう。だから、女性は子供の養育という重要な責務を負う宿命的な弱い立場にあった。

近頃、茶髪やピアスをしている男の子が増えたのは、動物のようにオスが弱い立場になってきたのではないか。選択権は完ぺきに女性に移ったようだ。

チンパンジーの睾丸はヒトの2~3倍ある。

 

ひろしです!

立ちションしていたらおじさんに、「ミミズにかけるとおちんちんが腫れるぞ!」と怒られた。

でも、それ位で丁度いいのです!

 

どうも発情期を動物の目で考えすぎていたことが間違いだったようだ。

人間の脳は異常に発達しすぎてしまい、動物が発情期にだけ感じる快楽を、年中感じるように脳を進化させて来たに違いない。そう考えないと繁殖にとって無駄な交尾の説明が出来ない。発情期をなくし交尾の快楽を追求したことで、人間は人生を楽しむことが出来、それと同時に文明を築き上げたことは間違いない。生殖行動が繁殖と切り離されたことで、人類は動物と全く異なる行動を持つように進化してきた。発情期はなくなってよかったのだ。

「ああ、ほっとした!」

 

中山恭三(なかやま きょうぞう)/不動産鑑定士。1946年生まれ。
1976年に㈱総合鑑定調査設立。 現在は㈱総合鑑定調査 相談役。
著書に、不動産にまつわる短編『不思議な話』(文芸社)を2018年2月に出版した。

PAGE
TOP