2月号(愛は地球を救わない“が”肛門は医療費を救う、トウガラシの話)

投稿日:2025年2月1日

1.”愛は地球を救わない“が”肛門は医療費を救う“

しばらく前に、アメリカで爆発的に売れた本が日本に入ってきた。タイトルは「フランス人は服を10着しか持たない」で、著者はカリフォルニア出身の女子大生(ジェニファースコット)で、パリのソルボンヌ大学に留学し、ホームステイ先はフランスの貴族の家だった。

その家の生活は極めてシンプルなもので、アメリカ人も見習うべきと考えた。

ある時、彼女は風邪をひいてしまった。女主人は体温計を差し出し、熱を測るよう言った。日本人は脇の下で測るが、アメリカ人は口の中で測る。

彼女は体温計を口の中に入れた途端、女主人はびっくりして止めた。

フランスでは、体温計は肛門(直腸)に入れて測るので、彼女は家族が使っていた体温計を口の中に入れてしまった。フランスのやり方を聞いた途端、あまりのショックで彼女の風邪は治ってしまった。外国に行くと、カルチャーショックはよくあること。

肛門(直腸)で測る理由は、脇の下は正確性に欠けるからである。脇の場合、冬に体が冷え切っている時と夏の暑い日に体が火照っているときは、ずいぶん温度差が出てしまい、深部体温が正確に測れない。口の中か肛門(直腸)が最も正確。赤ちゃんや幼児は小児科によっては耳で測ることが多い。

体温計には接触型と非接触型があり、非接触型は正確性に欠けるので病院ではあまり使わない。

接触型の体温計は、口の中で測る国と肛門(直腸)で測る国がある。日本は脇の下で測るが、脇の下で測る国は少数派。アメリカは口、ドイツ・フランスは肛門(直腸)が一般的。体温計の測り方と国民性に何か関連があるだろうか。

脇の下は正確性に欠けるから、日本は欧米を見習い、医院・病院では口か肛門(直腸)のどちらかで測るようにするべきだ。

体温を口か肛門(直腸)で測らないと、「健康保険が使えない」ように行政指導するべき。

医師から、口か肛門(直腸)で測れと言われると躊躇してしまう。口に入れれば、前の人がどうやって測ったかが気になる。トイレで測って下さいと指示されると、国民は気楽に医者にはかかれない。

社会保険料は毎年値上がりしている。値上げしても医療は赤字続きだ。

体温計を脇の下から口か肛門(直腸)に変えただけで、医療費はかなり抑えられ、その結果、社会保険料は毎年減額されるようになるかもしれない。

それだけではない。

精神科医の和田秀樹氏は、長野県は一人当たりの老人医療費が全国34位にもかかわらず平均寿命は全国トップクラスである。その理由は、老年医療の専門医が最も少ない県だからとしている。長野県民は、高齢者が医者に行かず薬漬けから逃れているというのがその理由だそうだ。高齢者は肝臓・腎臓の機能が落ちているため、薬を分解し排泄する時間が長い。だから血中濃度が上がってしまい、薬が毒になってしまう危険性が高いと指摘している。

やはり医者は気楽に行くところではないようだ。

欧米の人たちは、医者に行って、体温計を測るのに躊躇しないのだろうか。

慣れ?

 

 

2.トウガラシの話

カラスが残飯を食い散らし、道路がゴミだらけになっている光景をよく見る。生ゴミに、ネットを被せて保護すればカラスの被害を防げると思った人間の裏をかいて、カラスはネットをクチバシで開けて「こんな程度のことで防げると思うな!」とカラスは人間を馬鹿にしているに違いない。何度ネットを被せても被害が収まらない。カラスに荒らされる度に、近所の方が掃除してくれているので何とかきれいな街路でいられる。こういう住民のことを「ネット難民」とは言わない?

何とかカラスを懲らしめようと、食べ物の中にフグの毒をまぎれさせ、「ゴミをあさると大変な目に合う」とカラスに学習させようと考えて友人に相談した。友人は、“カラスはテトロドキシンを臭いで避けるので効果ない”と言った。

そこで、カラスの大好物のマヨネーズの中に、とびっきり辛いトウガラシを混ぜて食べさせようと考えたが、これも彼に、“カラスは辛味成分のカプサイシンを感じ取るレセプターが存在しないので効果ない”と言った。

多くの動物はトウガラシを食べないが、カラスは一番辛い種まで食べる。

トウガラシは、カラスが種を運んでくれたために増殖し進化したのか、カプサイシンを感じ取るレセプターをなくしてカラスが進化したのかどちらかだろう。

カラスは腹だけでなく全身が黒い。だからカラスが好きだという人は滅多にいない。

目が全身の黒さで隠れてしまっていることから、カラスは「鳥」の漢字から一本引いて「烏」という漢字にしたという。

カラスが真っ黒な体になったのは、自分自身にも責任がある。

昔々、鳥はみな白い色をしていたそうだ。

ある小鳥が、神様にお願いした。”神さま、仲間が見分けられるよう、どうか鳥の羽に色をつけて下さい”

神は、”そうか、確かにそれは困るだろう。同じ色にしたのはわしの失敗じゃ”そこで神は、賢いフクロウにこの仕事を頼んだ。

“みんなの要望を聞いて色を付けてやってくれ“

フクロウは早速、鳥たちの要望どおりの色を付け、仕事を無事終えた。

ところがフクロウに何も要望を伝えていないカラスが残っていた。フクロウはカラスに言った。”どんな色にでも致しますから、お好みの色を言って下さい”

カラスは、”俺は鳥の中で一番頭が良い、鳥の王にふさわしいカラフルなデザインしてくれ“

その後フクロウは何度もデザインを持ち込んだが、一向に気にいられない。カラスが気に入るまで、何回も何色も羽に色を付けたので、羽は一面真っ黒になってしまった。カラスは怒ってフクロウを追いまわした。

この事件以降、フクロウはカラスから逃げのびて夜行性になった。

 

唐辛子は「唐」と書くので中国から伝来したのかと思いきや、南蛮由来のものである。ポルトガル船が「唐」に寄港してから日本に持ち込んだからこう呼んだのだろう。

昔、「唐」は外国という程度で使われていた。

大陸(唐)と交易していた地域では、「唐枯らし」では縁起が悪いので「胡椒」と呼んだのだそうだ。確かに、「ゆず胡椒」は胡椒ではなく、あの辛味はトウガラシだ。

コロンブスは、印度と間違えて西インド諸島に辿り着いた。そこでトウガラシに出合うのだが、彼はトウガラシを胡椒の一種として間違え「ペッパー」と呼んだ。

コロンブスは、トウガラシと胡椒の味の違いだけでなく、トウガラシがつる性の植物だということも知らなかったのだろう。イザベラに莫大な資金援助をさせて胡椒を求めて航海したのだから、何が何でもトウガラシを「ペッパー」と言い張ったのかもしれない。

しかし、ヨ-ロッバの人達はトウガラシの辛さを受け入れなかった。辛味を抑えたピ-マン、パプリカは好まれた。

アジアやアフリカでは、トウガラシは害虫の繁殖を防ぎ、暑さで減退する食欲増進として胡椒より好まれた。

「インドカレ-」は胡椒よりトウガラシをよく使う。タイ料理のトムヤムクン、四川料理、韓国のキムチは大量に使われる。

「インドカレ-」によく用いられる激辛唐辛子に、「インド人嘘つかない」という唐辛子がある。こんな変な名は当然学名ではない。ある種苗屋さんの商品名で、この種苗屋さんは他にも「感激アミーゴ」、「魔女の杖」、「牛角大王」という名の唐辛子を売っていて、総て激辛である。激辛好きの人はアマゾンで注文出来るからどうぞ。

世界一の激辛唐辛子は、「キャロライナ・リーパー」で、これはギネスで世界一になっている。「ハバネロ」の一種で、香辛料というより劇薬に近い。プチボトル入りで、これもアマゾンで手に入る。

買って食べて、なにかあっても私は一切責任を取らない。

日本が韓国に伝えたトウガラシは、現地では「倭辛子」と呼ばれていた。

韓国は「元」の支配下にあった頃から肉食文化になっていたので、「倭辛子」は保存・調味料として使われた。

日本では肉食は仏教で禁止されていたので、トウガラシが使われたのは恐らく明治になってからではないかと思う。

日本人は、食材の鮮度を重視する文化だったので、素材の味を壊すトウガラシは和食文化に合わなかった。

トウガラシを食べると、カプサイシン(毒)を無毒化しようとして、胃腸は早く消化・分解しようとして活発化するので、その副作用で食欲が増進する。

更に、胃腸は無毒化に懸命になるため、血流が速くなり汗をかく。「辛い物を食べると涼しくなる」のは、発汗作用によるから。

舌の味蕾が味を感じるのは、基本五味と言って、「甘味」・「酸味」・「塩味」・「苦味」・「旨味」の五つで「辛味」は入っていない。辛味は味ではなく痛覚や刺激であると説明されている。

冷たいもの、例えば「氷」、体に塗ったメントールも刺激で、16世紀に加藤清正が足袋のつま先に霜焼け止めとして韓国に持ち込んだのは、やはり刺激だとすればなるほどと思える。

脳は、痛みを和らげるために、脳内麻薬である「エンドルフィン」を分泌する。だから、トウガラシの辛さは快楽にもなるので、依存症になるかもしれない。

いやかなりの人が依存症になっているはず。

 

 

 

中山恭三(なかやま きょうぞう)/不動産鑑定士。1946年生まれ。
1976年に㈱総合鑑定調査設立。 現在は㈱総合鑑定調査 相談役。
著書に、不動産にまつわる短編『不思議な話』(文芸社)を2018年2月に出版した。

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